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事件
発端:消えた三年間
年に一度の定期監査。担当者は「諸経費」の欄に並ぶ、金額の大きな出金の連続に目を止めた。摘要はどれも「取引先対応」「諸謝礼」とだけ書かれ、領収書が添付されているものは半分もない。
過去三年分をさかのぼって集計すると、総額は620万円にのぼった。担当者は青ざめた。この帳簿を一人で管理していたのは、経理主任の佐伯洋子だった。
その佐伯は、二週間前から体調不良を理由に長期休暇に入っている。誰もいない経理デスクの上に、使い込まれた手書きのメモ帳が一冊、置き忘れられていた。